学校に行ってない小学四年生と学校に通っているとは思えないくらいにアクティブな小学五年生と山添村開拓。


「うちに不登校の息子を預けたい」 



のびのびと過ごせる自然の中にいて、子ども関係のことをやっていて、なおかつ暇そうなヤツということで、僕が選ばれたのだろうか。




ついに、不登校の少年を預かることになってしまった。


「帰りたくない」って言ったら帰らせる。


そんな約束を決めて、東京から彼と一緒に山添へと旅立った。



彼、Kは別に学校でいじめられたとかではなく、ただクラスの人たちや学校が面倒くさいために学校に通わず、ホームスクールの選択をした若干9歳の男の子。


別に小学生であろうが、やりたいことがあればやれるし、行きたい場所があればどこへでも行けることを知っている今となっては「ああ、そんな便利なシステムがあったのか」と思える。



特に、小学生は電車料金も特急料金もすべて半額。うらやましいことこの上ない



そう思えたのは彼のおかげだったのかもしれない。そして、その彼が今回の山添村開拓に来てくれた。


謎の小学生・ヒカル


彼と初めて出会ったのはもう三年前。当時、彼は9歳で僕は21歳だった。


僕が初めて自分のワークショップで出張の機会をもらえたとき、その共同主催者の息子さんとして彼に出会った。


ヒカルは当時学校でかなりの問題児として扱われているものの、本人そのものは非常に優しい性格で、授業中に発した質問からキラリと光るものを感じさせる。


それから、ヒカルは僕やそのお母さんを通して、いろいろな大人に出会い、成長した。


青春18きっぷで名古屋から長崎の生月まで向かい、途中自ら提案した賭けに負け、全財産を失いながらも、その辺で拾ったものを売り歩いてなんとか電車賃を稼ぎ、最終的に駅の人に11円まけてもらって無事に生月にたどり着いたときには素直に「こいつスゲえな」と思わせてくれた。



それらの経験から、飛行機も新幹線も自分一人で乗りこなすようになり、さらに各所で勝手に商売を始めるようになりと、どこかのIT社長が小さい頃にやっていそうなことを難なくこなしていた。


山添村は彼が住んでいる名古屋に比較的近い。


週末、お遊び感覚で遊びにこれるだろうと思うと嬉しくて仕方がなかった。



世代を超えた遊び



Kと一緒に名古屋行きのバスに乗る。


朝8時半に出発するバスは昼の1時に名古屋に到着する。


Kもまた青春18きっぷの経験者らしいので、これくらいの長距離移動には慣れているらしい。


ただ、名古屋までの四時間半はとても退屈で、遊びをしてみることに。


「スマブラする?」

普通、山村留学に行かせる場合、ゲーム類なんかは置いていかせるらしいが、僕はそうしなかった。

なぜなら、スマブラは世代を超えて遊べるゲーム


わざわざ、彼との共通の趣味があるのに、それを置き去りにする理由はなにもないだろう。


流石にバスの中だからか、それとも初対面だったからか、彼とはえらく落ち着きながらスマブラをしていた。


だけど、彼がスマブラの中で卓球しよう!と言い出したのをキッカケに、僕はある遊びを提案。


プリンゲームしようぜ。

スマブラ界最弱と噂されるプリンには、出が早い割に当たれば最強、ハズれれば大きなスキを生む「眠る」攻撃がある。

あたったときの爽快感、「こいつ、こんなに強かったのか」という再認識。


今の小学生と同じゲームをやっていたからこそできた遊びの提案だった。


Kにとって、これはかなり面白かったらしく、山添についてもたまにやることになった。

IMG20190216192311




肉を食えば、テンションが上がる

名古屋で車を手に入れ、ヒカルと合流する。

「それくらいで友達になれると思うな」


そう語るKの友達へのハードルはとても高そうだ。親友でないと、友達ではないのかレベルだ。


お腹を空かせていた僕らは車に乗り込み、名古屋から山添村に向かう。



「焼き肉行こうぜ」


こういった瞬間に彼らの目の色が変わった。

だけど、当然奢るわけでもなく、それぞれがお金を払って焼き肉に参加するのである。

さらに提案


「俺にゲームキューブのスマブラで勝てたら、お前らに焼き肉を奢る」



ヒカルは「絶対に勝ってやる」と意気込む。一方、Kは「なら、普通にお金払う。別に安いし。」と。


ヒカルは金が絡むと異常にやる気を出す両津のような男だが、Kはそうではないようだ。

ただ、同時にKは大人であるように見えるものの、やりたいことがあっても、ハードルを感じた瞬間にすぐに諦めるタイプであるようにも思えた。


IMG20190215191606


でも焼き肉は美味しく食べていた。テンション上がりまくり。


「北くんのところで修行をさせて、Kの野性を開放させてほしい」


それが、僕にKを預けてくれたお母さんの要望だからこそ。


次の日の朝、庭で木と木がぶつかり合う音がした。











IMG20190216104019


庭で木刀を振り回していた

昨日の夜に古民家で見つけた木刀。

小学生キッズたちにとって、これほど振り回したいものはないだろう。

僕が布団の中でスマホをいじりはじめたのを見つけて、起きたと判断してから「木刀の打ち合いをしようぜ」とKが提案し、ヒカルがそれに付き合う。


僕はそれを止めて、さらに家にあった竹刀を追加して、小太刀を使った二刀流のやり方なんかを説明して続けさせた。





リアル宝探しゲームとマネーゲーム

木刀をカチカチさせるのに夢中らしいのを確認して、僕は彼らを放置してお風呂づくりを再開する。

今日の作業は浴槽底の補強と隙間のモルタル塗り。

ただ、雨が振り始めたので、この日のやることを蔵探検に変更。


蔵の中はまだまだ未開拓な部分が多く、宝物が埋まっているらしいと聞いたヒカルは探検にやる気を出す。

IMG20190216153542
IMG20190216153530

まさか、ガチお宝を発見するとは思わなかったけれども。


個人的に、EXPO'70大阪万博記念メダルがテンション上がりまくったけれど、小学生のキッズたちは少し重めの金の皿に興味を示したようだ。

オーナーさんからは、蔵の中は全部捨てても構わないと言われていて、何かあったらオークションとかで売ればいいとも言われていた。


金の皿よりも万博記念メダルの方が欲しかった僕は即金のお皿を放棄。


小学生キッズたちにその命運を握らせた。


当然ながら、どちらも譲れない。


しかし、ヒカルが「これを死んだおばあちゃんに見せたい」と言い、おばあちゃんにまつわるエピソードをあれこれ話したところ、Kはヒカルにお皿を譲った。


ただ、ヒカルのおばあちゃんの話をした直後、張り合おうとして自分のおじいちゃんの話をしていたKのことを僕は覚えている。


やっぱり、いろいろと諦めているんじゃないか?


Kのことがより気がかりになった。


IMG20190216181720




「お前もだぞ」

辺りも暗くなり、やることがなくなった我々は和光からもってきたゲームキューブで遊ぶ。


Kはかなり楽しかったようで、僕らがやった後もしばらく一人でマリカーダブルダッシュとスマブラをやっていた。


ヒカルも山添を楽しんでくれたようで、「俺、一週間くらいここにいたいな」と言ってくれた。


さっそく、お母さんにその旨を伝えるために電話を貸す。


しかしながら、お母さんの返事は僕たちの予想していたものとは大きく違うものだった。



「一時のテンションに任せて、他のやりたいこと捨ててない?」



ヒカルは塾に通っている。自分で中学受験をしたくて、もっと勉強したいと彼自身が言ったからだ。


そして、学校についてもかなり充実しているようで、友達にも恵まれている。


だけど、先週も彼はスキーの疲労のために学校を休み、塾にも通わなかった。


「今、ヒカルが学校や塾を『行かなくちゃ』って気持ちでやっているのなら、別に行かなくてもいい。だけど、そうじゃないってママは知っているから、今ヒカルに話をしているの。」



他のお母さんが自分の子供に対して真摯に向き合っている様子を実際にこの目で見るのは初めてだ。


それも、僕が親友だと思いたいくらいに親しい2人がそれをやっていたからこそ、お互いの気持ちがよくわかった。


「今日雨だったから、山の探検とかあんまりできなかった。だから、何日もいてもっと山を探検したいし、生き物も見つけたい。あと、Kくんとももっとお友達になりたいから。」


ヒカル渾身の回答は少しばかりウルッとこさせるものがあったけれども、Kくんは「そんな簡単に友達になれると思うなよ」とちょっとツンっとした回答。



ただ、残念ながらその要望は明日限りでしか叶えられそうにない。


明日は森林探検の時間をたっぷりとれる。だけど、明後日からしばらく僕が出張で山添を離れなければならなかった。



それを知ったヒカルは明日帰ることを決めた。ヒカルのお母さんは「別に来週に行ってもいい」と話していたけれども、ヒカルは「また電車賃つかうのがいやだ」と言っていた。


ヒカルのお母さんも僕も、彼の悪い癖が現れていたのを見逃さなかった



「投げやりになって、なんでも諦めるんじゃない」


なにか一つが叶わなくなると、もう何もかも無気力になってしまって、何もやりたくなくなる。

別にヒカルに限ったことではないが、僕も一度はこんな状態になっていたことを思い出した。


これが続くと、そのうち自分のやりたいことがわからなくなって、せっかく時間もお金もあるのになにをしたらいいのかもわからなくなってくる日がやってくる。


ヒカルはとても面白いやつだからこそ、お母さんも僕もそうなってほしくないと強く願っていた。


そして、すでにそうなりつつあるキッズがこの空間にいたことも見逃さなかった。


「別にやりたいんだったら、やればいいじゃん。お金は大丈夫って言ってるんだから。」


そう言ったのはK。


この二日間、いろいろとやりたいことを持っているのに、何も言い出さなかったり、本当は「こうしたい」があるのに、見栄を張ってそれを隠しているKが言っていた。





「お前もだぞ?金ごときでやりたいこと諦めたりしてんじゃねーよ。」




本当は寒いはずなのに、「寒くない」と言って変に我慢して半袖貫き通してたり、木刀振り回すのがスキなくせにそれで草木を切るのを楽しそうに見ているだけでやらなかったり、誰もお願いしてないのに勝手に遠慮して自分のやりたいことに素直になれずにいるKを見て、思わずそう言ってしまった。



もっとも、Kがヒカルに言っていることがそのままKにもあてはまるものだったが。




ドーナッツ経済

IMG20190217120733


次の日、ヒカルに森林探索をしてもらうべく、Kとヒカルの時間をとるために朝のうちに買い物を済ませる。


一日目には買い物について来ていた彼らだったが、今回は車の中に籠もってマイクラをやっていた。


お前ら、昨日いろいろ欲しいもの言ってなかったっけ?


買い物を終え、山添に戻ったらお昼ご飯。

twitter経由でもらったうどんを茹で、ゆず出汁醤油でいただく。安定して美味い。



ヒカルもKもどちらもあまり片付けをしなかったので、こんな交渉をしてみることに。


「うどんはタダだけど、焼きドーナッツは一個10円、食べ放題で50円だよ。」


金を払いたくないヒカルは早速俺に値引き交渉をしかける。


Kは昨日の話が効いたのか、なんとかしてお金を払わないでもいい方法を考える。



「なにか労働することを条件に俺に値引き交渉するといいよ」


もちろん、ちょっとだけ彼らにドーナッツを試食した上での交渉。


焼きドーナッツは山添に来て一番最初の発明と言えるくらいに美味しいメニューだったので、彼らは大ハマリ。



結局、洗い物をやったり、食器を運ぶことをやったりしたことで、彼らはドーナッツを獲得。


この後、森を探検。


IMG20190217150344
IMG20190217144019


木を切ったりして遊んだ後、なんか疲れたらしいので、母屋に帰る。


ヒカルと僕は蔵探索に。Kはゲームキューブ。

IMG20190217174304


そういえば、Kはゲームばかりしているなぁ。


そう考えた僕に悪魔が智慧を授けてくれた。


たった一人のサバイバル



「しばらくゲームをやらせてみよう。」



Kはみんながやろうがやるまいが、ずっとゲームをしていたので、別に放っておいてもゲームはやっているのだろう。



僕やヒカルが彼を誘わない限り、Kは何もしないからこそ、あえてゲームをずっとやらせてみるのもよさそうだ。


僕もヒカルもゲーム大好きではあるけれども、ゲームよりも楽しいことを知っていたり、一日に何時間もゲームをやり込んだりするために、ゲームそのものに飽きを感じるようになった口だ。



ならば、山添に来てずっとゲームをやってばかりのKも、ずっとゲームをやらせ続けていたらきっと飽きるのではないか?


大阪に仕事で行く必要があり、山添を3日ほど離れなければならなくなったこともあって、この作戦を決行するに至った。



近くにお店はあるし、お金は渡してある。


三日間くらいな餓死しないだろうし、ガスもすべて切れており、エコキュートとIHクッキングヒーターがあるから、調理には困らないだろう。


ヒカルを名張まで届けた後、Kにそのことを伝える。



Kは「お湯さえ沸かせれば、カップラーメンとか食べれるし、暖房もあるから余裕だよ。」と言っていた。


だが、Kは三日間奈良に残される本当の恐怖を知らなかったのだ...,


ー続く。




P.S

竹灯籠作った。
楽しい。
IMG20190217202447